アボリジナルに関する社会問題, オーストラリア人権問題

オーストラリア先住民、アボリジナル・ピープルを知っていますか?

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オーストラリアの先住民アボリジナル・ピープルを知っていますか?

オーストラリアの先住民、アボリジナル・ピープルは、約5~12万年以上も前からオーストラリア大陸に上陸し、地球上に現存する最古の文化と歴史を持つ民族だと言われています。

アボリジナル民族はオーストラリア大陸の広大な大地と厳しい乾燥環境に順応した暮らしをしていた狩猟採集民でした。

しかし、1700年後半から始まったイギリス植民地支配により、アボリジナル民族は当時約50万~100万人いた人数が、迫害や伝染病により1920年までには7万人にまで減少してしまったと言われています。

*現在の人口はおよそ72万人まで回復しオーストラリア全体の約3.3%を占めています。

記録ドキュメンタリー映画「IN MY BLOOD IT RUNS」

先日、ずっと観たいと思っていた「IN MY BLOOD IT RUNS」というドキュメンタリー映画を観てきました。

このお話は、オーストラリアのアリス・スプリングスに住む10歳のDujuan君を3年間に渡ってフィルムした記録に基づくお話しです。Dujuan君は先住民のアボリジナルです。

この映画に登場するDujuan君の家族は失われつつあるアボリジナル民族の伝統や言語を、彼にしっかり受け継いでいって欲しい、そしてこれからオーストラリアで生きていく子供達にの未来には「教育」というものが必要なのではないかと考え、アリス・スプリングスの中でも都市部にある小学校へDujuan君を通わせます。

アボリジナル民族は17世紀にイギリス領になるまで、文字を持たず暮らしていました。生活の術は日々の狩りや伝統から学んでいたので「学校」という教育機関は存在していませんでした。

Dujuan君はアリス・スプリングスの都心部にある学校へ通いはじめるものの、しばらくすると、学校へ行きたくないと言って授業中にクラスを抜け出したり、授業態度も”悪い”と学校側から何度も注意を受けます。

学校に通っている間、Dujuan君は先生が理解を示さず笑って話す「Dreaming」の話や、白人視点をベースにした歴史の教え方に違和感と蟠りを感じます。

「Dreaming」はアボリジナルの人々にとってとても神聖で大きな意味を持っています。

そしてDujuan君は学校の最悪の評価である‘’オールE‘’のレポート(成績表)を見て静かに涙を流します。

Dujuan君は校長先生から学校での生活態度について最後の警告を受けますが、それを無視し学校を去ることを選びます。

しかし、政府から学校へ通わせる為の生活保護を受けているDujuan君の家族は彼が学校へ通わなくなった場合、その分の援助金がカットされてしまいます。更に彼の両親は、このままではDujuan君が少年拘置所へ連れていかれてしまう、という恐怖感と彼の未来を考え、他の街の学校へ転校させる決断をします。

転校した先で彼は、アボリジナルの先生に先住民の言語を教わったりすることで少しづつ笑顔を取り戻していき、休日は大地に足を運び自分らしく生きる生き方を楽しみ始めます。

この後、Dujuan君は国連人権理事会と国連児童権利委員会に、オーストラリア政府が、もっと自分達の歴史や言語を教えてくれる教育システムの提供と、アボリジナルの子供達により良い教育機関や暮らしの支援を求める呼びかけをしました。

この映画は何万年以上も前からオーストラリアの大地で暮らしてきた彼/彼女たちが持つ、知恵や伝統、習慣、言語、アート、自然に対する想いや心の豊かさ、そしてそれを消滅させず次のジェネレーションへ受け継いでいってもらいたい、そんな家族の強い願いと想い、そして未だ白豪主義が残る中でジレンマを感じながらも懸命に自分らしく生きようとするDujuanの姿に感じるものがある映画です。

「In my blood it runs」はオーストラリア国内でまだ上映しています。各州違った日程で放映されていますので、オーストラリアの歴史や背景に興味がある方は良かったら公式サイトから確認してみて下さい。

In my blood it runs 公式サイトはこちら

現在のアボリジナル・ピープルの暮らし

オーストラリアでは2008年にケビン・ラッド首相が政府として初めて公式に先住民であるアボリジナルの人々へ謝罪をし、1993年には元々彼達の居住地であった地域の所有権を受け渡し、生活保護の手当ても約束しました。

しかしその中には、都市へ溶け込んで生活をしたり、白人社会の同化生活に馴染めないアボリジナルの人達も沢山おり、元々の住居地であったアリス・スプリングスの住居地での生活を選択し暮らし続ける人達も沢山います。

今回は、そのアリス・スプリングスに住むDujuan君がどのように現在の教育機関や生活水準の中で暮らしているかの記録ドキュメンタリーを紹介しました。

おわりに

植民地主義者の理想が深く根付いているオーストラリアの現実が未だあることが窺えるドキュメンタリー映画でしたが、お互いの文化や歴史を尊重し合い学習を提供することで、双方の理解を深めながら共存できる社会になっていけたらいいなと思うのと同時に、移民者である私はオーストラリアの過去の歴史をできるだけ頭に入れて暮らしていきたいと思っています。

本日も最後までお読みいただきありがとうございます。

 

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